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「片耳うさぎ」大崎梢

「片耳うさぎ」
大崎 梢
光文社
2007-08
勝手に評価:★★★★★

 片耳うさぎに気をつけろ。
 屋敷に入れるな。
 入れれば人が殺される。
 蔵波奈都は小学六年生。引っ越してきた父の実家は、古くて大きなお屋敷で、どうしても馴染めない。しかも、このお屋敷には不吉な言い伝えがあるというのだ。弱った奈都が頼ったのは、ひとりの謎めいた女子中学生だった……。優しい読後感が嬉しい、傑作ミステリー長編。(本の帯より)

初めてのシリーズ外の作品で、舞台も書店じゃなくて、しかも賛否両論ある長編という枠。ちょっと心配してました。でも、面白かったです。グングン引きこまれていって、私にとっては期待を裏切らないものでした。表紙から裏表紙にかけてのイラストもとっても可愛くて大好きです♪

私が住んでいる家は二階家で、築三十年くらいのを一度増改築したものです。まだ健在な祖父が建てたのです。私が中学生の時に増改築は行われたのですが、それまでは隙間風がビュウビュウ入ってきたり、薄暗い土間の渡り廊下を通ってトイレに行ったりという感じでした。この本の中に出てくるような大きい家ではありませんが、幼い私にとっては古くて暗い部屋があって、一人では怖い家でした。風邪をひいて座敷の布団に入っていると、天井板の模様が動き出すように見えたり、夜の和式トイレはポッカリ黒い口を開けているように見えて、その度にビクビクしていました。だいぶ変わってしまった今となっては、懐かしい思い出です。

この作品を読んでいて、そんな昔の風景やら思い出やらを思い出しました。古い家でやるかくれんぼや探検ごっこは、とてもワクワクして楽しいものでした。だから、奈都の同級生のお姉さんであるさゆりが一緒に4日間をお屋敷で過ごすことになって、家に着いて早々に探検を始めた時は、私もドキドキしながら二人の後ろにくっついて行きました。隠し階段や屋根裏部屋、叔母さんの部屋の探索など、ハラハラする場面もたくさんありました。積極的なさゆりに引きずられていく奈都の姿も可愛くて、微笑ましかったです。

そして、うさぎに関する言い伝えが出てきたり、大昔に起こった事件がわかってきたり、物語は読み手を引き込んだところで展開を徐々に加速させていきます。それと一緒に段々奈都も自分の家の謎に一生懸命向き合うようになって、自分で解決していこうとする成長過程も描かれていて、ますます目が離せなくなっていきました。

「片耳うさぎ」が誰なのかというのが後半で分かってくると、今まで何も違和感無かった出来事が実は全て伏線だったことが一気に分かります。さらに答えを握っているのが小学生の奈都と中学生のさゆりだということも分かって、もう大混乱です。3日目の夜から奈都の推理が冴えてきて、たくさんの座敷の襖がスイスイ開いていくような…そんな爽快感溢れる急転直下の展開には驚かされました。そんな二人の行動に大人たちが振り回されている姿は愉快でした。

ラストで、奈都と暮らしていた怖い大人たちの寂しさや優しさのこもった素顔にはジーンときて、ウルッとしました。主人公の奈都だけじゃなく、蔵波家のそれぞれの心の重荷が和らいで、家族のまとまりができる様子が心地良かったです。
Author: chiro
あ行の作家(大崎梢) | permalink | comments(4) | trackbacks(6)
 
 

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コメント:
こんばんは。
奈都とさゆりの屋敷探検、ご自分の体験とマッチしてすごく楽しまれたのですね。
“たくさんの座敷の襖がスイスイ開いていくような…”
おお、目くるめく表現!。
あたたかいラストがとても良かったです。
comment by: 藍色 | 2007/09/07 1:22 AM
>藍色さん
襖って一気に開けるのが気持ちいいよなぁって思い出したから書いてみました(笑)。
我が家の襖は少々開きがぎこちないですが…。
ラストは思っていたよりもあったかくてホロッときました。
まさにハッピーエンドでしたねぇ。
comment by: chiro | 2007/09/07 4:30 PM
あっちよりもこちらの方が好きかも。
児童書のようなわくわく感が、自分には合いました。
探検って楽しいもんね。
comment by: しんちゃん | 2007/09/28 4:53 PM
>しんちゃん
レスするのが遅くなってしまって、ごめんなさい。
風邪でダウンしてました・・・。
今もまだ完全復活ではないですけど、またボチボチやっていきます。

成風堂シリーズよりこっちの方が冒険あり、ミステリありっていう感じで、しかも年代問わず楽しめそうな内容ですよね。
古いお屋敷の探検は私もとてもドキドキしました。
comment by: chiro | 2007/10/02 9:01 AM
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