<< 「配達あかずきん―成風堂書店事件メモ」大崎梢*prev
「サイン会はいかが?―成風堂書店事件メモ」大崎梢 >>*next
 

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -
 
 

「晩夏に捧ぐ―成風堂書店事件メモ(出張編)」大崎梢

「晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編>」
大崎 梢
東京創元社
2006-09-30
勝手に評価:★★★★☆

 以前成風堂にいて、今は故郷に帰り、地元の老舗書店に勤める元同僚の美保から、杏子のもとに一通の手紙が届いた。勤務先の宇都木書店、通称「まるう堂」に幽霊が出るようになり、店が存亡の危機に立たされている、ついては名探偵のアルバイト店員を連れて助けに来い、というのだ。杏子は気が進まぬながら、多絵を伴って信州の高原へと赴く。そこで待ちかまえていたのは、四半世紀ほど前に弟子の手で殺されたという老大作家の死に纏わる謎であった……!「本の雑誌」二〇〇六年上半期ベストテンの堂々第二位に輝いた『配達あかずきん』で今もっとも注目を集める著者、初の長編推理小説!(カバーより)

ページ数からいけば、そんなに前作とは変わらない量なのだが、今回は長編ということで文字通り長く感じた。前作がテンポ良くスッキリ各話完結の短編集だったので大丈夫だろうかと心配(余計なお世話)していたが、杞憂に終った。

今回は舞台を地元にある老舗書店に移し、本に纏わるミステリが繰り広げられた。本と言っても関わっている人間は様々な種類があるわけだが、今回は書店と作家の関係にスポットが当たっている。作家というと本屋とはあまり関係が無いようなイメージだが、地元に根を下ろした地方老舗書店で、店主は作家と懇意にしていた、という設定だ。老舗ともなれば、こういう関係もあるのだな〜と感じた。この設定だけでもなかなか面白かった。

今回は完璧に杏子と多絵が探偵になっている。ホームズが多絵で、ワトスンが杏子という具合だ。だからといって多絵が何でもスイスイというわけではなく、あまりの不器用さで悲惨な状況になりそう(もしくは「なった」)な所を、杏子が必死になって止めに入るというシーンもある。このデコボココンビという設定がユーモアで、飽きさせず、暗すぎずで心地良い。

最初は単なる幽霊騒ぎだと思われていたが、いざ二人が信州へ駆けつけてみると、実は背後に27年前の殺人事件があった。結局その事件を解決しないことには幽霊事件の真相も分からないらしい。そして、幽霊事件の前後には、27年前の事件関係者も小火騒ぎや空き巣の被害を受けていた。果たしてどちらも犯人は同じなのか、それとも本当に幽霊がやっているのか…。前作よりもしっかりとしたミステリ風味が付いていると思う。

謎を解く鍵は様々な形で散りばめられている。前作で発揮された日常風景に溶け込む「引っ掛かり」が、今作でも絶妙なバランスで織り込まれている。前作があったからこそ、大崎氏だからこそのやり方ではないかと思う。何気ない会話に秘密が隠されていたり、何となく問いかけた言葉が相手を焦らせる…。そのやり取りがなんでもないように描かれている。それが凄く良かったと思う。それにより分かりそうで分からない焦れったさと謎の深まりを感じさせ、どんどん話に引き込まれることとなった。

また、前作と比べて今作は、ミステリ要素が高まっているだけではなくキャラや事件背景も色濃く描かれ、物語に厚みを加えている。殺人事件自体は、犯人の男が逮捕され、裁判を経て刑に服し、数年後には獄中死しており、客観的には解決しているはずだった。しかし、幽霊事件をきっかけにし、事件関係者の証言から男の人柄、素性が徐々に明らかになっていく。男自体が大きな謎になっていて、最後まで存在感があり、目が離せない。印象的には宮部みゆき氏の『火車』を連想する。丹念に男の輪郭描写から肉付けまでの作業が行われていく。『火車』と大きく異なる点は、そこまで行った作業をここぞという所で隠していた爆弾を一気に破裂させたことだ。かなり予想外の結末で、二面性や冷酷さ、狂気を感じていた男のイメージが180度変わってしまう。これには見事にやられてしまった。

ミステリ要素だけではなく、前作同様に書店についての実情など本に纏わる話も満載だ。地方老舗書店の雰囲気、棚の作り方、書店員の本への愛情など、興味深く、書店好きは目を輝かせてしまうような内容だと思う。かといって、これらがミステリの風景を壊してしまうことはなく、むしろ味わいを深くさせ、余韻を大きくしている。このあたり、読書好き且つ本好きには、たまらないコンビネーションではないだろうか。

色々大げさな言い方で褒めてしまった気がするが…(苦笑)。ただ、中間だれている印象もあり、少し無理に引き伸ばした感もある。反対にラストは急いで答えを詰め込んだような所があり、尻切れっぽくなっている。この内容であれば、長編よりは中短編程度の長さが向いているような気がする。
Author: chiro
あ行の作家(大崎梢) | permalink | comments(10) | trackbacks(7)
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -
 
 
コメント:
こんばんは。
順調に読み進まれていますね。
まるう堂さんが素敵でした。
こんな魅力的な本屋さん、近くにあったらうれしいですね。
成風堂に戻っての「サイン会はいかが?」もお楽しみに。
comment by: 藍色 | 2007/07/22 1:00 AM
>藍色さん
おはようございます。
まるう堂さん素敵ですよね!
近くにあったら、絶対常連になります。
他の本屋なんて目じゃないです(笑)。

「サイン会〜」読み始めました。
やっぱり成風堂の二人というのがしっくりきますね。
comment by: chiro | 2007/07/22 8:01 AM
chiroさん、おはようございます。

まるう堂さんのモデルになった書店に行って見たいなって思いました。
歴史があって、本に対するこだわりがある
すごいことです。

comment by: なな | 2007/07/22 8:05 AM
>ななさん
おはようございます。

モデルになった書店、私も行ってみたいです!
あそこまで歴史があって、店舗がそのままの本屋ってなかなか無い気がします。
本当にすごいですよね。
comment by: chiro | 2007/07/22 8:30 AM
おはよー。
けちょんけちょんに書いたのでTBするか悩みました。
だけど結局はTBしちゃいました(汗)
もう一回読んで、褒めた感想に変えようかな。。。
comment by: しんちゃん | 2007/07/22 9:45 AM
>しんちゃん
こんばんは〜。
いえいえ、TBしていただけて嬉しいですよ♪
感想は十人十色ですから。
それに、前に読んだ本との関係で、気に入らなかったりもすると思います。
だから大丈夫ですよ!(何が?)
comment by: chiro | 2007/07/22 7:08 PM
こんばんは!
待ちに待った2作は長編、ってことでどんなんだろう?と
思っていましたがなかなか素敵なお話しでした。
この雰囲気、まるう堂さんのこと、大崎さんならではの視点で描かれていてこちらも堪能しました。
早くも3作目が出ましたね!そちらも楽しみです。
comment by: リサ | 2007/07/22 9:06 PM
>リサさん
作品全体の雰囲気が良かったですよね。
まるう堂の方々はじめ、本や店への愛着が感じられて、じんわりしました。
3作目も今読んでるところですが、やっぱり面白いです!
comment by: chiro | 2007/07/23 7:44 AM
こんばんは^^
この2作目、あまり評判がよろしくないようで他の方のブログでほめてるところを見た事がなかったので、chiroさんの感想がとても新鮮でした(笑)。
わたしも結構楽しく読んだんですけれどね。でも3作目を読むと、やっぱり短編がいいかなって気もします。また4作目、長編でくるのか短編がくるのか。今からもう楽しみです♪
comment by: まみみ | 2007/07/23 9:12 PM
>まみみさん
ですね(苦笑)。
私だけが絶賛してるようで、逆に戸惑ってしまいました。
言われてみれば少し無理して調子に乗って感想を書いてしまった気もします…。
でも、面白かったのは本当です。

次は長編だといいなぁと思ってます。
新しいシリーズをもってくるのか、単品にするのか、そこも気になりますね。
comment by: chiro | 2007/07/24 10:49 AM
コメントを書く:






トラックバック URL:
http://chiro-address.jugem.jp/trackback/71
トラックバック:
COVER PHOTO:SAY-KA。BOOK DESIGN:岩郷重力+WONDER WARKZ。 「配達あかずきん」(「本の雑誌」2006年上半期ベストテン第2位)でデビュー。 成風堂書店、店員の木下杏子に以前の同僚・有田美保から届いた手紙。
trackback by: 粋な提案 | 2007/07/22 1:00 AM
晩夏に捧ぐ 大崎 梢 駅ビル六階の書店「成風堂」で働く杏子はバイトの多恵と一緒にある事件の容疑者のアリバイを証明した。そんな杏子の所に元同僚で今は地元長野の書店で働く有田美穂からの手紙が届いた。数日前に長電話したはずの彼女からの手紙には「働いて
trackback by: ナナメモ | 2007/07/22 8:01 AM
晩夏に捧ぐ大崎 梢 (2006/09/30)東京創元社 この商品の詳細を見る 「本屋の謎は本屋が解かなきゃ」の第2弾です。 杏子と多絵のコンビが信州まで出かける出張編です。 いきなり負なこと書くよ。 長編なので文章の未熟な部分
trackback by: しんちゃんの買い物帳 | 2007/07/22 9:41 AM
晩夏に捧ぐ 大崎梢/東京創元社 友人からの手紙で、地方の老舗書店の幽霊騒動を探りに出かけた杏子と多絵。そこで待ちかまえていたのは、四半世紀ほど前に弟子の手で殺されたという老大作家の死に纏わる謎であった…! 元書店員さんが書くミステリということで話題に
trackback by: ひなたでゆるり | 2007/07/22 9:01 PM
晩夏に捧ぐposted with 簡単リンクくん at 2006.11. 5大崎 梢著東京創元社 (2006.9)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る
trackback by: 今日何読んだ?どうだった?? | 2007/07/23 9:04 PM
晩夏に捧ぐ&lt;成風堂書店事件メモ・出張編&gt; (ミステリ・フロンティア) 出版社: 東京創元社 (2006/9/30) ISBN-10: 4488017304 評価:70点 「配達あかずきん」という本が「本の雑誌2006年上半期ベストテン第2位」になり一躍有名になった著者。 これ
trackback by: デコ親父はいつも減量中 | 2008/01/12 12:33 PM
晩夏に捧ぐ大崎 梢 東京創元社 2006-09-30売り上げランキング : 6790おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools  『配達あかずきん』に続いて早くも刊行された「成風堂書店」シリーズ(って呼んでいいのかな?)の第二弾。今回はなんと、殺人事件が絡んでました。
trackback by: 今夜、地球の裏側で | 2008/02/04 12:23 AM