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「バスジャック」三崎亜記

「バスジャック」
三崎 亜記
集英社
2005-11-26
勝手に評価:★★★★☆

 あの『となり町戦争』に続く衝撃作!
 話題のデビュー作に続く注目の第2作。バスジャックブームの昨今、人々はこの新種の娯楽を求めて高速バスに殺到するが…。表題作他、奇想あり抒情ありの多彩な筆致で描いた全7編を収録。(集英社HPより)

前知識なく挑んだので、短編集だということをもちろん知らず、かなり気合いを入れて挑んだのだが…。ちょっと拍子抜け(苦笑)。

しかし、前作「となり町戦争」に比べると、読みやすくなっているし、少し不思議な感じがする作風は変わっていなかった。

二階扉をつけてください
全7作品の中で、一番衝撃的な話なんじゃないかと思う。感覚的には「世にも奇妙な物語」。ラストのワンシーンはゾッとした。三崎節が怖いくらいに炸裂した作品なんじゃないかと思う。いや、怖いくらいってか、怖いっすよマジで(笑)。これ以降の作品はわりと和やかなので、トップバッターにコレを持ってくるなんて…と思った。三崎氏がニヤリとしている気配を感じた。

しあわせな光
すごく短い。三崎氏の作品レベルで考えると、全く真新しさは無い。先が見えるし。しかし、読み終わった後にほんのり心が温まる。前の話から次の話へのクッションになっていて、構成的には必要な作品だと思われる。

二人の記憶
コレも「二階扉〜」の次にゾッとした。作品自体は別に怖いシーンがある訳じゃなくて、むしろ哀しい感じなのだが。しかしね、記憶がすれ違うどころか、噛み合わないというのは恐ろしい。恋人同士なのに、相手が言ってる「記憶」が自分には全然身に覚えが無いなんて…。自分だったら凍りついて、心が離れていきそうな気もする。それでも、話の中の二人はお互いを信頼しようとしていく。ちょっと綺麗過ぎる話なのかもしれないが、私はこういうのは大事だと思うし、一番必要な感覚というか、あってほしいモノだと思う。最後の彼の一言が良い。ちょっとホロッときた。この中で一番好きな作品だ。

バスジャック
全作品中、一番訳の分からない話。表題作なのに(苦笑)。でも多分、コレが一番三崎節入魂の作品なんだと思う。まぁ、表題作だしね、当たり前だけど(笑)。何気なく出てくるキャラがラストに実はグルだったというのが面白い。実際にこんな世の中であってはほしくないけど、描かれてる人間性はよくある感じで、リアルさを感じた。バスジャックのおかげでバス会社が儲かるなんて…あってほしくない…。そういう意味では、この作品を理解できなくてホッとしている自分がいる。

雨降る夜に
この話も凄く短い。コレも「しあわせ〜」と同じ「クッション」だと思われる。実際にこういうのあったらいいなぁ、面白いなぁと思う。面と向かって相手の本にまつわる感想とか思い出を聞いて、それで自分も読んでみるっていうのは、斬新だ。ネットでチャットするのより、やっぱり相手の顔を見て話聞いたら、表情もあるし、余計にその本に愛着が沸いたり、興味が向くと思う。いいなぁ、ぜひ誰か企画してほしい(笑)。

動物園
三崎作品というのは、リアルな世界の中にリアルじゃ有り得ないモノを紛れ込ませて、あたかも当然なように振る舞わせるのが作風であり、特技だと思う。まさにこの話はそんな作品。檻にいる動物と絡めて人間の束縛感とか孤独感を描いていて、比喩ではなく融合していて、上手いなぁ(エラソウだ)と思った。起伏とか話の持っていき方は見えているんだけど、そこが面白くて好きだ。

送りの夏
ラストに相応しい作品。「人形」な人々と一緒に暮らすことで、「死」が何なのかを感じていく小学生の女の子の話。最初は「人形」に少しゾッとして、変に勘ぐって読んでましたが、女の子がわりと素直な感性を持っていたので、心にスッと沁みてきた。小学生という素直さと多感さが入り混じった年頃が主観に置かれているので、この作品全体に温かい空気が流れている。リアルでは有り得ない光景だけど、きちんと「死」に向き合っている人々に妙なリアルさを感じた。私もまだ「死」を意識できる年齢ではないので、主人公と共にぼんやりとカクゴについて考えさせられた。この作品がラストということもあって、さらに話の厚みが感じられ、良かったと思う。

しかし、全体的には物足りなさを感じた。「となり町〜」で三崎氏の勢いを感じただけに、残念だ。短編集にするならば、もう少し癖のある粒揃いなモノがほしかった。
Author: chiro
ま行の作家(三崎亜記) | permalink | comments(3) | trackbacks(9)
 
 

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コメント:
chiroさん、こんばんは!

>三崎氏がニヤリとしている気配を感じた
って、読んで笑ってしまいました(笑)
確かに、ニヤリとしていたかも。。
「となり町戦争」のイメージで(しかもうろ覚え)読み始めたので、
ん、こんなのも書かれるのね?!と衝撃が。

粒揃いなものがほしかったとのこと、同感です。。
キレを求めるか、それとも情緒的な面で引き込むか、どっちつかずな作品が多かったなあ・・・感じたのでした。
comment by: くろ | 2007/07/19 9:04 PM
chiroさん、こんばんは。

「二階扉をつけてください」から始まって「送りの夏」まで、物語の順番が良かったなって思いました。

短編集、こんな風なものも書くんだ…って三崎さんを知る事が出来てお得な気分になりました。
comment by: なな | 2007/07/19 10:55 PM
>くろさん
笑っていただけて嬉しいです☆
調子に乗って書いてしまいました(笑)。

「失われた町」で完成度が高すぎたので、やっぱり物足りなさが先行してしまいました。
次作も長編だといいですね〜。

>ななさん
「しあわせな光」は三崎氏にしては意外な感じですよね。
短編集って作家の意外な一面を垣間見れるモノなのかもしれないですねぇ。
comment by: chiro | 2007/07/19 11:13 PM
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