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「ミミズクと夜の王」紅玉いづき

「ミミズクと夜の王」
紅玉 いづき
メディアワークス
2007-02
勝手に評価:★★★★★

 魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。
 額には「332」の焼き印、両手両足には外されることの無い鎖。自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。
 願いはたった、一つだけ。
 「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」
 死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。
 全ての始まりは、美しい月夜だった。
 ――それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。
 第13回電撃小説大賞<大賞>受賞作、登場。(カバーより)

まず、最初に言っておくことにする。この物語を私は舐めてかかっていた。ごめんなさい。そして、この物語に出逢えて良かった。ありがとう。

少女が「イヒヒ」って笑うのを見たことも読んだこともなかった。それに「あたしのこと食べてよ」って言ってみたり…。本の帯で有川浩氏が「泣きました。」って言ってたけど、ホントかよ、とも思った。

そう言いつつも、ミミズクが徐々に人間らしい感情を取り戻すのを見守ることにした。それぞれの感情に名前を付ける術を知らなくてもいいから、せめて少しでも生きることを望んでくれれば、と思いながら。

序盤はミミズクの過去が明らかになり、想像を絶する内容に驚きを通り越して呆然とした。彼女は単に知識が無いから奇行だったのではなく、苦しいことを苦しいと感じる暇も無かったことが原因だったのだと思った。

それでも、夜の王とクロと触れ合っていくうちに、苦しみ以外の感情も覚え始めていた。そんな幸せな一時も束の間、森に隣接していた国から夜の王討伐の一行が訪れ、夜の王は捕まってしまう。夜の王の力によりミミズクは、それまでの過去の記憶を封じ込められてしまう。

この時点で、結末がどうなるかは薄々わかってくるものだ。それは感動的なものだろうし、それなりに涙するシーンだろう。しかし、結末が見えてくる物語に、私は多分泣けない。やっぱり有川氏が泣きもろかっただけか?と、また思った。

しかしどうして、ここからが紅玉氏の腕の見せ所だった。見事にやられた。本当はここで潔く頭を下げておけば良かった、と今更ながら思う。

後半になり、そこからは舞台が一変し、ミミズクは裕福で愛情を一心に受ける生活を送るようになる。皆が彼女を優しく強く抱きしめ、笑顔で接する。それだけじゃなかった。何の罪も無い夜の王を討伐した悪者のはずの国王や騎士達の痛みや苦しみ、悲しみといった人間性の描写が始まる。これにはかなり面食らった。その人達が全然悪者じゃなかったからだ。それぞれがそれぞれの不器用な優しさを持っていて、憎むに憎めないのだ。

もう一つやられたことといえば、ほんの少し賢くなったミミズクが元の記憶を取り戻したシーン。愛が何なのかを知り、人間として生きることの何たるかを知ってしまったミミズクが、それとは反対の自分の過去を思い出す…。これには参った。随所随所で涙が止まらず、かといって読むスピードは加速する一方で。こんな本読んだこと無いよ、参ったよ…と、ついに白旗を高々と掲げるに至った。

最終的には誰もが納得のいく、やっぱり想像通りの結末を迎えるのだが、前述のようにキャラの設定がしっかりしていて人間味豊かなおかげで、良い様に良い意味で振り回されっぱなしだった。最後の方でミミズクが「それは恋だから仕方ないのよ」みたいなことを言われていて、ああそうなのか、これが恋ってやつだったのかと、まるで初恋を自覚したみたいな妙な感慨に耽り、ちょっとくすぐったくなった。

キャラの特徴描写がぼんやりとしていて、最初は読みづらい気もしたが、読み終わってみて逆にそれが良かったと思った。ある程度読者に主導権を握らせておいて、そして肝心要の部分は絶対に離さず、ギュッと掴んでおいて思い切り揺さぶりをかけてくる。何度も言うが、本当にやられた。白状します。降参しました、みたいな(笑)。

新人でこの完成度の高さ。次はどんな風に仕掛けてくるのか、期待よりも心配が募る。それ程この本を読んだ満足感は大きかった。次作以降は「良い作品に出逢えた」ではなく「良い作家に出逢えた」と思わせてくれるような(エラソウだ・笑)作品を首を長くして待ちたい。そして、ぜひこの作品はアニメ化してほしい。
Author: chiro
か行の作家(その他) | permalink | comments(8) | trackbacks(8)
 
 

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コメント:
こんばんは。

ブログで出会わなかったら絶対に読まなかった本。
出会えてよかったって思える本ですよね。
次作、期待したいです。
comment by: なな | 2007/07/16 11:07 PM
>ななさん
そうですね、私も話題にならなかったら読んでなかったと思います。
電撃文庫は嫌いじゃないんですけど、買って読むには当たりハズレが激しそうなイメージがあるので(苦笑)。
出逢えて良かったですよね、ホントに。
comment by: chiro | 2007/07/17 7:47 AM
おはよー!
後に出版に至る経緯を知りましたが、この本を手に取りやすい文庫本で出たのが嬉しいです。
たくさんの方に読んで欲しい作品ですね。
映像化はやっぱジブリでしょ(笑)
comment by: しんちゃん | 2007/07/17 9:43 AM
>しんちゃん
文庫本で嬉しいという声を聞いたのは初めてです。
でも、人それぞれの感覚ですからねぇ。
私はどちらかといえば単行本が良かったんじゃないかと思います。
もちろん、文庫本の方が自分としてもすんなり買えたというのはありますが。

やっぱり映像化はジブリですよね!(笑)
誰かコソッとボソッと関係者に呟いてくれないですかね?(爆)
comment by: chiro | 2007/07/17 6:00 PM
こんばんは!
じんわり温かなお話しでしたね。
ぐっときました。
私は電撃文庫全く抵抗がない人なんですが、
この作品その電撃の中でもかなりの異色でそこに逆に
惹かれて手に取ったら…予想外の素晴らしさにビックリでした。
素敵な作品でしたね。
comment by: リサ | 2007/07/22 8:59 PM
>リサさん
おはようございます〜。
表紙からして異色ですよね!
評判を聞いても半信半疑だったんですけど、読んで良かったです。
今年のベスト3に入りそうです。
comment by: chiro | 2007/07/23 7:39 AM
お初にお目にかかります、Sと申します。

今回、トラックバックをさせていただいたのですが、トラックバックというのはこちらからそちらへのリンクでは無く、その逆なんですね。いやはや、自分の無知っぷりに愕然としてしまいました。
しかし、それはそれで、むしろ私としては大手を振って喜んでいいような気がしますので、結果オーライです。私のところのような開設して(動き始めて)間もないようなブログですと、一日の来客数が一桁だったりと、とても物悲しいものがありますからね……!

それにしても、ミミズクと夜の王にはほとほと感服せざるを得ませんでした。脱帽ものです。あまりの感動にうまく書評出来なかったほどです。
そのためか、貴サイトのように、的確適切に纏められた書評というものには憧れてしまいます。
なにせ私は感覚で書いている節があり、ストーリーを完全にすっとばして書いてばかりですからね……。

さて、前書きが長くなってしまいましたが、私は貴サイトが大好きになりました。
ゆえに、リンクさせて頂きました。
(事後承諾で失礼千万ですが……)
何か都合がありましたら、仰ってください。
その時は直ぐに外しますので。
comment by: S | 2007/12/07 5:29 PM
>Sさん
ここ2ヶ月ほど全く更新していないブログへ、ようこそ(笑)。
申し訳ないです、ホント(ため息…)。
年が明けるまでにはカムバックする予定です(汗)。

まだまだ駄文だと自分では思っていますが、気に入っていただけてとても嬉しいです☆
こちらでもお邪魔してリンクやTBをさせていただきますね♪
これからもよろしくです。
comment by: chiro | 2007/12/09 7:55 PM
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