<< 「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦*prev
「マージナル」神崎紫電 >>*next
 

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -
 
 

「Little DJ―小さな恋の物語―」鬼塚忠

「Little DJ―小さな恋の物語」
鬼塚 忠
ポプラ社
2007-03
勝手に評価:★★★★★

 大切な想いほど、つたえることができない
 海を臨む病院に入院して、ディスクジョッキーになったチビでヨワムシな少年。毎日届くリクエスト、病室に響く懐かしいメロディ、個性的な医師や入院患者たちとのゲストトーク……少年のお昼の放送は、病院全体を明るくあたたかな空気で満たしていった。そんな日々も束の間、やがて病状が悪化し、お昼の放送ができなくなってしまう。そして少年は11歳の誕生日に、ある決意をして、街に飛び出した。(カバーより)

泣けた。次に読む本が頭に入るかどうかわからないくらい、余韻に浸っている。

主人公の少年・太郎は、10歳にして白血病であることが判明する。本人には告知せず、悪魔でも「重い風邪だ、すぐに良くなる」と言い続ける周囲。しかし、滅菌室に閉じ込められ、ひとりぼっちになった太郎は、元気がなくなってしまう。そこへ主治医の父親である大先生が現れて、お昼の時間に流す院内放送のDJをやってみてはどうかと勧められる。そして、DJを通して様々な人々と出会い、世界を拡げていく…。

私も幼い頃は体が弱く、入退院を繰り返していた時期があった。子供部屋にいた時もあったし、大人部屋にいたこともあった。小児科病棟にいた頃は、毎晩消灯の時間になると、音楽を流して「おやすみなさい」というような内容のことを喋った。それは当番制で、順番が回ってくるのが楽しみだった。太郎のようにDJをやったわけじゃないけど、それと重ね合わせて、懐かしい気持ちで読んだ。

自分の実体験と重なる部分もあったせいか、ドキュメントを読んでいる気がした。太郎が笑う時は私も微笑み、泣く時は涙を滲ませ、怒る時は一緒に憤った。病状が悪化し、ついに告知をされた時、太郎は母に当たり、父に叱られた。私はそのシーンが一番印象に残っている。それまで息子の病気から逃げていた父親が、初めて正面から息子と向き合い、共に病気と闘っていく覚悟を決めた。太郎もそんな父親や周囲のおかげで、ようやく背負っていた暗い気持ちが和らいだ。これってすごく大切な過程だと思う。ここでうやむやにしてしまったらいけない。どんな良い薬を使えたとしても、やっぱり支えや愛情がなければ互いに駄目になってしまう。太郎の病気は悪いことばかりではないと思えて、私も癒された。

病院が海の近くにあり、時代は1970年代。ピンクレディーや山口百恵が活躍していた時代。それらの音楽と情景の中で、太郎の初恋が甘酸っぱく描かれていて、哀しいけど優しい気持ちになった。

最後に「ラストコンサート」のLPから帯が落ちて、そこにあった太郎の気持ちを初恋相手だったたまきが読んだ時、私も涙が堪えられなかった。たまきが大人になり、ラジオのDJをやっていたことにも小さな感動を覚えた。

この作品は、今年の冬に映画が公開されるそうだ。太郎役を神木隆之介君。たまき役を福田麻由子ちゃん。二人を思い浮かべ、一つ一つのシーンを感じながら読んだ。心が洗われて、静かな感動を与えてくれる大切な一冊となった。青春時代の甘酸っぱい恋、純粋さ、真っ直ぐさを、ぜひ皆さんにも体感してほしい。
Author: chiro
あ行の作家(その他) | permalink | comments(0) | trackbacks(0)
 
 

スポンサーサイト

Author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -
 
 
コメント:
コメントを書く:






トラックバック URL:
http://chiro-address.jugem.jp/trackback/64
トラックバック: