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「となり町戦争」三崎亜記

「となり町戦争」
三崎 亜記
集英社
2004-12
勝手に評価:★★★★☆

天才現わる!?見えない戦争を描いた衝撃作。
ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。だが変わらぬ日常に、僕は戦時下の実感が持てないまま。それでも“見えない”戦争は着実に進んでいた。「清澄な悪夢」「傑作」と選考会騒然の衝撃作!第17回小説すばる新人賞受賞作。(カバーより)

失われた町」を読んで、三崎亜記氏を知りました。で、この作品がデビュー作。比較すると、やっぱり今作品の方が物足りない感じはありますが、デビューということを考えると、すごい作品だと思います。回りくどい言い方ですけど(笑)。情景描写がすごく綺麗で丁寧ではあったんですけど、ちょっとしつこくて読む気力を削がれそうになることが度々…。

題名の通り、戦争のお話です。でも、普通に考える戦争とは少し違います。ここでの戦争は「事業の一環」として行われています。目的は「町を活性化させるため」。私達が知っている戦争も確かに「国を豊かにする」という目標を掲げて行われていましたが、それともまた少し違う感じ。きちんと場所を選んで、住民に許可を得て、戦闘が行われるんですから。そして、となり町と協力して「戦争」という事業を遂行する…ということだそうです。でも、戦死者は出るし、やっぱり戦争なんですよね。血みどろの惨劇が描かれているわけではない「戦争」のお話ということで、主人公と共に不思議な感覚で読みました。

主人公は「戦争」の影を感じられないまま、ずっと平凡な日常を暮らしていきます。敵に捕まりそうになって逃げるシーンもあるんですが、本人は映画のワンシーン気分でいます。戦争が終ってから、徐々に自分の周りでどんな被害があったのか実感していきます。自分のために戦死者が出たり、身近な人が兵士になっていたり。それでも結局、主人公にとっては失ったものも得たものもありませんでした。まるで霊感の無い人が廃墟に行っても何も感じられなかったように、感じようとしても、見ようとしても、まるでリアルさが分からないという感じでした。読んでいる方としては、主人公の感覚しか分からないので、じれったいような、ホッとするような…やっぱり不思議な感覚でした。「戦争はやってはいけないことだ」という感覚を持っているのに、「この程度だったらまだ良いかな」とか「町同士が本当にいがみ合っているわけではないし…」という考えが芽生えてきそうで、怖くもありました。

実際の戦争は、私の祖父(現在79歳)が体験しています。兵士にはならずにすんだものの、空襲や食糧難の話を私はよく聞きます。テレビでも当時の映像が流れたりして、戦争の悲惨さを教えられたりもします。でも、本当に心の底から「戦争はやってはいけないことだ」と思っているのかと聞かれたら、正直なところ分かりません。この物語のように議会で戦争が決まってしまったら、自分はどうするのか?声を大にして反対を唱えることができるのか?「あなたには迷惑をかけません。被害があれば補償します」と言われても、否定できるのか、拒否できるのか?この本を通じて、初めてそれを実感しましたし、そういう疑問を持ちました。戦争という歴史知っていても、リアルさがなければ本気で否定はできないんじゃないかと思いました。それでも、主人公のように「戦争があったことを忘れないで日常に戻っていく」ことは大切だと思います。その日常の先で「何か」を実感することがそれぞれの「戦争」になるんじゃないかと思います。

色々なことを一気に考えさせられて、上手く言えないんですけど(苦笑)。こうやって感想を書いてみて、読んでいた時よりもこの物語の凄さを感じました。確かに「傑作」だと思います。戦争を知らない世代が読んで、それぞれの心に「戦争」という言葉を留めておく大切なきっかけになる本だと思います。
Author: chiro
ま行の作家(三崎亜記) | permalink | comments(5) | trackbacks(9)
 
 

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コメント:
>「この程度だったらまだ良いかな」とか「町同士が本当にいがみ合っているわけではないし…」
なんとなくわかります。
でも、戦争ってそうやって始まっていくんじゃないかなって思いました。
怖い事です。
comment by: なな | 2007/07/07 8:44 PM
こんばんは。
「事業の一環」として行われる戦争。
リアルさが感じられない、現実感が薄い印象でしたけど、
こうやって、なし崩しに巻き込まれることに恐怖感を抱きました。
comment by: 藍色 | 2007/07/08 2:39 AM
>ななさん
そうですね、怖いですね。
戦争に参加する自覚を持つって難しいなと思いました。

>藍色さん
参加している気はなくても、気付いたら既に巻き込まれているっていう・・・。
そのどうしようもない無力感とか、恐怖とか・・・本当に日常になってしまったら怖いですね。
comment by: chiro | 2007/07/09 9:01 AM
 こんばんは♪
 TBどうもありがとうございました。

 この作品そのものは、私はあまり評価できなかったんですが^^;;、それでもいろいろ考えさせられるきっかけにはなりました。
comment by: miyukichi | 2008/01/14 5:31 PM
>miyukichiさん
こんにちは。
こちらこそTBありがとうございました。

全体的にモヤモヤした展開でしたよね(苦笑)。
「戦争」という素材の展開はすごく面白かったんですけど、他の人に薦めるのはためらってしまうような感じです。
とはいえ、やっぱり引き込まれてしまう作品でした。
comment by: chiro | 2008/01/15 11:57 AM
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