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「モノレールねこ」加納朋子

「モノレールねこ」
加納 朋子
文藝春秋
2006-11
勝手に評価:★★★★★

小学生の僕は、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが… (文藝春秋HPの内容紹介より)

表題作ほか7作品が収録されている短編集です。表紙がとても可愛かったので読むことにしました。

モノレールねこ
我が家でも猫を飼っています。このお話とは正反対で、人間の一存で家族になりました。それに、エサはあげてますが、健康を考えてるし、よく暴れるしで、痩せ型です(苦笑)。さて、我が家の猫は置いておいて、感想を。この本の出だしとしては、とても読みやすいお話でした。後半、少しショッキングなシーンがあるにも関わらず、ラストの仕掛けのおかげで爽やかな後味になってます。

パズルの中の犬
私もパズル大好きです。この話の主人公のように2000ピースに嵌った時もありました。でも、組み立てにも飾るにも場所を取られるので、そこがちょっとね(苦笑)。この夫婦の家は広いみたいなので、とても羨ましいです。さて、本の感想(笑)。だんだんこれ以降のお話から不思議だったり、ちょっと気味が悪い印象が強くなっていきます。でも、なんでか後味は変わらず爽やかです。それに、ほんのり心が温まります。このお話では主人公とその母親の口論のシーン(というか、一方的に母親が怒る)がありますが、それは長い年月を経て、やっとお互いの心の壁が解消されていく様子が描かれていました。女性が書く女性というのは少し陰湿な面もありますが、同性である私としては、かえってこれでスッキリするのかな〜とも感じて、共感できました。男性の作家さんも同じような場面は書けるでしょうけど、やっぱりシーンの雰囲気が女性らしくて、私は好きですね、こういうシーンは。

マイ・フーリッシュ・アンクル
最初にタイトルを読んだ時「アンクル」って何だっけ?と思いました(笑)。英語はあまり得意じゃないですが、カタカナになると余計わかんないですね。このお話は、実にフィクションらしい展開です。こんなの有り得ないでしょっていう感じです。でも、その中にフーリッシュな叔父さんがいて、主人公を心底心配している…ますますフィクションっぽいですが、この叔父さんが妙に未練たらしくて人間らしいんですよ。30にもなってこの「らしさ」はすごいなと逆に感心してしまうほどです。このお話が一番ほのぼのしてて好きです。

シンデレラのお城
このお話って「世にも奇妙な物語」に出ててもおかしくないと思います。ホラーってほどではないですが、やっぱりちょっと不気味…。でも、描写の感じが丁寧だったりアッサリしていたりで、読みやすいし、少し心が温まる印象もあります。この作家さんだからできる絶妙な雰囲気のバランスなんじゃないかと思います。あ〜、でもやっぱりラストの終り方は、その先を想像すると怖いんですよね(苦笑)。

セイムタイム・ネクストイヤー
「同じ時間の来年に」という意味でしょうか。間違ってたらすみません(汗)。このお話も「世にも〜」に出てきそうなお話です。後半に種明かしされるシーンは、ああやっぱり…と思っていると、さらなる種が!ちょっとびっくりしました。それで、このラスト後の展開を想像してしまいました。今度は旦那さんが来るんじゃ…?と。そして、このホテルがそんな客ばっかりだったら、ちょっと気味が悪いな〜とも思いました(苦笑)。

ちょうちょう
このお話はわりとベタな展開じゃないかと思います。他の作品が個性的だから、印象も薄いです。でも、このお話がクッションになって、また雰囲気がちょっと和らぎます。主人公の失恋とかピンチとか、無茶苦茶ベタすぎ(笑)。漫画だってもう見なくなったタイプじゃないかと。主人公とランちゃんのその後が気になりますねぇ。

ポトスの樹
この主人公、唯一口が悪いです(笑)。女性作家が書いてるとは思えないくらい悪い。父親と主人公の関係の悪さも凄いです。でも、ちゃんとハッピーに収めるあたりがこの本の作者らしい感じがしました。やっぱり孫ができると、こんなに人間関係が丸く収まるものなんでしょうかねぇ。それにしても、主人公の奥さんは人間が出来てる良い人だ、と随所で感心してしまいました。

バルタン最期の日
各作品には中表紙があって、イラストがあるんですが、これのイラストが一番可愛くて好きです。主人公がザリガニなので、視点が客観的で面白いです。「最期」は、ザリガニらしくなくて、そこがまた面白いです。ザリガニもその家族もかなりお人好しなんじゃないかと思いました。残された家族のその後がハッピーになっていくといいなぁと思いました。


この作家さんの柔らかくて優しい描写が良いなぁと思いました。どこがっていう訳じゃないんですが、雰囲気が良いんです。読んでいて、すごく居心地が良かったです。なんだか春や夏に吹くそよ風を感じました。
Author: chiro
か行の作家(その他) | permalink | comments(7) | trackbacks(6)
 
 

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コメント:
そいえば、「世にも奇妙な…」ぽい物語もありましたね。
加納さんの書く本、空気が心地よいですよね。
まさに「そよ風」です。
comment by: なな | 2007/04/17 7:50 PM
加納さんの作品はどれもこういったやさしい雰囲気のものが多いんですが、その中でも1番好きな短編集でした。どのお話も味わい深くて…一話どうしても感情移入しすぎてアレでしたが(苦笑)
不気味な話も最後はさわやかで、読みやすかったです^^
comment by: まみみ | 2007/04/17 8:38 PM
>ななさん
心地いいですよね〜。
気持ちよすぎて寝てしまいそうなくらい(笑)。

>まみみさん
感情移入は大切ですよ!(笑)
私はさっそくパズルを買ってきましたし(苦笑)。
comment by: chiro | 2007/04/17 9:39 PM
chiroさん、はじめまして。
コメント、TBありがとうございます。
柔らかな語り口に親しみがあふれている短編集でしたね。
優しい雰囲気で心地よく、さわやかな気持ちになれました。
また合う記事がありましたら、TB、コメントお気軽にどうぞ。
これからも、よろしくお願いいたします。
comment by: 藍色 | 2007/04/18 1:28 AM
>藍色さん
いらっしゃいませ。
この作家さんは良いですね。
良い出逢いでした。
おかげで藍色さんのブログにも出会えました!
またお邪魔したいと思います。
こちらこそよろしくです。
comment by: chiro | 2007/04/18 8:01 PM
ごめんなさい。トラバ未到着でした(汗)。
これに懲りずにまたお越しくださいね…。
comment by: 藍色 | 2007/04/25 2:39 PM
>藍色さん
いえいえ、わざわざありがとうございます!
こちらこそ、またぜひいらしてくださいね。
comment by: chiro | 2007/04/25 3:22 PM
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