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「100万分の1の恋人」榊邦彦

100万分の1の恋人「100万分の1の恋人」
榊邦彦
新潮社
2007年1月20日
勝手に評価:★★★★★

「私は、0.0001%の運命を背負って生きているの」――大学院で曾根崎心中を専攻する僕に、幼馴染の恋人はある秘密を打ちあけた。サヨナラを言えば、2人は幸せになれるかもしれない……それでも僕の心はこう叫ぶ。絶対に、彼女じゃなければ、ダメなんだ。今すぐ大好きな人に会いに行きたくなる、極純のラブストーリー。(新潮社HPの書籍紹介より)

最初は難しいテーマで気が重くなって、なかなか読めませんでしたが、後半辺りからのめり込んでいけました。

物語は、主人公のケンちゃんが就職先が決まったことを彼女であるミサキに電話で報告するところから始まっていきます。彼女には事前に、就職が決まったら結婚しようとプロポーズしていました。彼女は「おめでとう」と言ってからほんの少し間を置いて、自分が重い病気を発病する可能性があることを告白します。その病気は遺伝性のものであり、発病する確率は50%。根治する治療法は未だ研究中…。彼はかなりの驚きや戸惑いを感じました。読んでいる私も半信半疑になったし、読む気力を一気に削がれそうになりました。でも、彼が彼女を支えたいと頑張り始めた姿を見て、私も物語に向き合う気になりました。

彼は彼女の抱える不安を少しでも共有したいと思うようになります。彼女が抱える暗闇を知る前も後も、彼は彼女をずっと愛し続けました。重い現実に押し潰されそうになりながら、何かに縋るような、祈るような切実な気持ちを抱えながらも、その芯の部分は揺らぎませんでした。これはあくまでも小説だし、現実ではこうはいかないことも多いです。でも、彼が彼女と話をし、現実に触れていく姿がとても丁寧に誠実に描かれていて、共感できました。嫌味も綺麗事もありませんでした。心にスゥッと優しい気持ちが沁み込んできました。

この物語は重い病気を話題の一つとして取り上げていますが、決して病気がテーマではありません。結婚や家族、家庭に対する覚悟、人が人を愛するということがテーマだと思います。そのことがどれだけ奇跡的で素晴らしいか、かけがえのない感情なのか。それが作者の誠実さと重なったおかげで、読了後は微笑みが浮かんでくるような、ある種の爽やかさが残りました。こういう良い後味の恋愛小説は初めて読んだ気がします。

物語の中で「君(主人公)の論文は小説的だ」という講評を担当教授が言う場面がありますが、私はこの物語自体は「論文的な小説」なんじゃないかと感じました。プロフィールにあった高校教諭という部分を読んで、「なるほど」と思いました。次回作が楽しみな作家さんです。
Author: chiro
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コメント:
いい本ですよね!もうちょっと注目を集めてもよいのではないかと思うのですが…。Chiroさんが書かれている「テーマ」について、私もほんとうにそう思います!
comment by: chiekoa | 2007/03/15 12:42 PM
>chiekoaさん
私ももう少し注目を集めてもいいんじゃないかと思いました。
私は「ダ・ヴィンチ」で紹介されてたので読もうと思ったんですけどね。
comment by: chiro | 2007/03/15 6:03 PM
chiroさん、こんばんは!
読み終えて家族のことや身近な人のことをいろいろと
考えてしまう作品でした。
主人公の誠実さがひしひしと伝わってそれが力強く
希望に満ちたものに感じました。
重たいテーマなのだけど、どこか爽やかなのは
あのラストがあったからですね。もっといろんな方に読んで欲しいな、と思います。
comment by: リサ | 2007/04/19 11:11 PM
>リサさん
私ももっと読まれて欲しいと思いました。
やっぱり「恋愛小説」として売り込みすぎなんじゃないかと思ったりもしました。
読んでみての印象と違うような(苦笑)。
comment by: chiro | 2007/04/20 8:11 AM
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